My Life Style 小寺良二オフィシャルブログ

小寺良二オフィシャルブログ。若者キャリア支援のプロが語る自分のLife Styleの見つけ方。

女子大生よりも女子高生の方が入社後に仕事で化ける理由

最近の新入社員は本当に「消せるボールペン」なのか?

毎年4月1日には多くの会社で入社式が行われ、大学や高校を卒業したばかりの若者が新入社員として社会に出る。

 

私は知らなかったが日本生産性本部の「職業のあり方研究会」というところが毎年その年の新入社員を特徴を表す言葉を発表しているようで今年は「消せるボールペン」になったらしい。

一見ただのボールペンに見えて”熱でインクを消せる”という「多機能」な面や、状況に応じて色(個性)を消せる器用さだったりを表しているようだが、毎年新入社員研修の講師をしている立場から見ると「熱」を加えて変化する人材と、なかなか変化できない人材とがいるように思う

 

よく人材育成に関わる講師の間では「化ける」という言葉が使われる。入社時や研修前にはどちらかというと大人しそうな印象で、飛び抜けたものを持っていないように見えても、研修の中で大きな成長を見せまったく違った人材になったかのように見えることを意味する

我々講師はある意味「学生モード」の新入社員に対して「熱」を加えて社会人としてやっていけるだけのマインドセットをする役割があるのだが、最近その熱に対しての反応が大学卒の「元女子大生」と高卒の「元女子高生」で違いがあると感じることが多い。

 

感覚としてはこちらの熱は変わらないのになぜか高卒の「元女子高生」の新入社員の方が化ける確率が高いのだ。研修前は明らかに幼い表情をしていた高卒新入社員が、研修終了時には正直誰が大卒で誰が高卒かわからなくなっていることが多々ある。

 

なぜ高卒新入社員は大卒新入社員よりも著しい成長を遂げやすいのだろうか?

 

働かなければならない理由が大きな成長を生む

今年ある小売系の企業の新入社員研修を担当した。60名ほどの新入社員のうち毎年20%前後の割合で「高卒」の新入社員がいる。

研修前はパッとみた瞬間に誰が高卒かは判断できる。ディスカッションなどをやると差は歴然で、ゼミや就活などのグループディスカッションで鍛えられた大卒組は慣れているためか発言数も多く余裕が見える。逆に高卒組は戸惑いどうしていいかわからない様子だ

 

ディスカッションなどはどの新入社員研修でもよくある内容だが、私が毎年携わる新入社員研修はかなり厳しい内容で、2泊3日の合宿型で行い、受講者を4〜5名ほどのチームに分け40kmを歩いて順位を競うようなハードなプログラムもある。当然途中でリタイア者が出るほど肉体的にも精神的にも追い詰められる研修だ。

 

正直ここまで来ると大卒も高卒も関係ない。むしろ高卒者の方が歯を食いしばって足がつりながらゴールするケースは多い。大卒の同期が続々とリタイアする中なぜそこまで頑張れるのか正直不思議であった。

 

私の担当したチームに1人足を痛めながら必死に他の男子メンバーに食らいついている高卒の女子メンバーがいた。あまりに忍耐力があるので彼女のプロフィールを見ると「空手」を中学高校とやっていることが書いてあり「なるほど」と私は納得した。

 

しかし最終日に行ったお世話になった人への「感謝の手紙」を読むプログラムで、彼女がどんなに苦しいことにも忍耐する「本当の理由」がわかった

 

彼女の感謝したい人は「母親」だった。他の受講者もほとんどは両親かお世話になった先生が多い。しかし彼女の感謝している理由は他の受講者とは違った。

 

彼女は三姉妹の長女で家が母子家庭だったので、母親はいつも仕事で家にいなかったらしい。祖父母と一緒に暮らしていたが、震災の年に祖父が亡くなってからは「女5人家族」の中で彼女は長女としてバイトをしながら母親や妹を支える立場になったようだ。

母親は仕事が忙しいにも関わらず授業参観にはいつも必ず来てくれたらしい。そして仕事をしながら勉強を続け、看護師の資格を取り、彼女含め3人の娘を1人で育ててくれたようだ

 

だから彼女は大学には行かずに社会に出て働く決心をし「今度は私がお母さんを支える番なんです」とその会社への入社を決めた。だから40km歩く中で足がつろうと、今までのお母さんの苦労を考えればその痛みなど苦しくないらしい。彼女は今回の研修で社会人として最も成長した受講者の1人となった

 

大学進学率が50%を超える現在、彼女に限らず高卒の新入社員の多くは「働かなければならない理由」がある。

 

それは周囲から見れば「かわいそう」と思える理由かもしれないが、本人たちにとってはある意味「当たり前」のことであり、逆に成長のエネルギーとなっている。

そして我々講師の「熱」が彼女たちの持つ「可能性」という色に変化を与え、社会人としての「成長」に変えていければ嬉しい。