My Life Style 小寺良二オフィシャルブログ

小寺良二オフィシャルブログ。若者キャリア支援のプロが語る自分のLife Styleの見つけ方。

エントリーを煽ったリクナビは本当に悪いのか?!

リクナビを安易に叩く人がわかっていない大事なこと

今年3月にネット上で話題になったリクナビの「エントリー煽り」について、リクルートキャリアの執行役員で新卒事業本部長の中道氏が東洋経済の11月29日号の記事「『リクナビ』の功罪」で「結果的に不快な思いをした学生さんたちには申し訳なかったと率直に反省している」と釈明をしている。

 

同社は就職サイト上で学生に対して「あなたのエントリー件数53社 内定獲得した先輩のエントリー件数78社」のように表示し「内定獲得した先輩に追いつく!」というボタンを設置し、企業への一括エントリーページへ誘導した。これが大量エントリーをむやみに煽っているとして、ネット上で批判が殺到することとなった。

 

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私自身はリクルート出身で、かつ現在も同社の若者就職支援CSR事業である「ホンキの就職」などにも関わっているので、きっと何を言っても「あんたはリクルート側の人間でしょ」と言われるかもしれない。しかし1人の若者就職支援のプロの立場として思うのは、このエントリーを促進する機能をつけたことは決しては悪いことではないと思う。

 

就職活動がうまくいかない学生の課題でよくあるのは、特定の業界や企業にのみ興味が向いてしまい、そこで結果が出ないと就職活動を諦めてしまうことだ。そしてその「特定の業界や企業」はマスコミや商社といった世の中的なイメージが良い業界であることが多い。当然競争率は高くなるので、結果が伴わないこともある。

 

大切なのはそこからで、自分のやりたいことや希望する職場環境を他の業界や企業からも探していくことが出来れば新しい気づきや出会いがあり、「最初は全然興味はなかったけど、この会社に出会えて良かった!」という結果につながる。

 

だからこそ、自分の興味を持っている業界や企業以外からの情報をまず浴びるというのは、実は視野拡大のためには絶対必要なのだ。

 

むやみに「リクナビはエントリーを煽っている」と叩く人はそこがわかっていない。誤解を恐れずに言えば、就活に苦戦する学生にとって正直まずは「どこでもいいから」興味のある業界・企業以外にエントリーすることから始めるのはとても大事なことなのだ。

 

本来就職サイト上の企業への「一括エントリー」とはそういった情報を得るチャンスである。しかし、なぜそんな便利な機能を作ったリクナビが叩かれるのか?それにはやはり理由がある。

 

リクナビが叩かれる本当の理由

リクナビがここまで叩かれる本当の理由は、就職・採用業界のリーディングカンパニーであるにも関わらず、若者の就職意識や視野拡大を促進する重要な役割を他の就職サイトと同じように「ボタン1つ」でサクッとやってしまったことだ。

 

就職活動に関わらず、本来人間は自分の興味関心のわかない情報にはなかなか意識が向きにくい。そういった状態で得た情報に対して、当然行動(応募)はなかなか伴わない。

 

就職サイト上での一括エントリーは「ボタン1つ」で簡単にできるが、実はその後に浴びる大量の「興味のない情報」から自分の求める情報を探したり、情報と向き合う意識を変えたりすのは簡単なことではない。

 

例えば今まで大企業に興味がある学生が、中小企業の情報を大量に受け取ったからといって簡単に応募することはない。そこにはもう一度自分の中で大企業のメリット・デメリット、そして中小企業のメリット・デメリットを整理した上で「自分なら、中小企業も合うかもな・・」という意識の変化が必要だ。

 

それは残念ながら「ボタン1つ」で簡単にできるわけではない。

1人1人の学生の価値観や求めているものと向き合いながら、時間をかけて社会や企業の実態を理解してもらい、学生の行動促進につなげていく。

 

そう、これはもうインターネットだけでは限界があるのだ。

 

今まで就職活動と言えば「リクルートリクナビ」だったかもしれないが、これからは変わるかもしれない。いや、変わっていく必要があるし私はリクルートが率先して変わっていくと思う。なぜなら、良くも悪くも「日本の就職と採用を変えてきた会社」だから。

 

変わるなら、学生にとっても企業にとっても、大きく言うなら日本にとってより良い形に変わってほしい。そのためには私のような社外の客観的な立場の人間の力も必要だと思っている。ぜひこれからは「ボタン1つ」に頼らない就職活動を創っていきたい。